東風解凍(はるかぜ こおりをとく)

立春(一節気)初候 第一候 2月4日~2月8日頃

 立春。太陰太陽暦(旧暦)では、新しい一年のスタート。いよいよ春を告げる第一歩。暦の上であろうと、寒さが和らいでいくと考えるだけでなぜか明かるくなり嬉しくなります。

 東風は、「こち」とも読みます。冬の季節風も終わり、早春になり吹き始める東寄りの風です。「東風」のついた様々な呼び方があります。時間・強さの違いから、「朝に吹く朝東風(あさごち)」、「夕方に吹く夕東風(ゆうごち)」、「吹き荒れる荒東風(あらごち)、強東風(つよごち)」。その他、「雨混じりの雨東風(あめごち)」、「梅が咲いた時の梅東風(うめごち)」、「桜が咲いた時の桜東風(さくらごち)」、「雲雀が鳴く日の雲雀東風(ひばりごち)」、サワラ漁が始まったら鰆東風(さわらごち)、「ブリの幼魚が取れる日はいなだ東風(いなだごち)、「真っ赤な椿が咲くときの椿東風(つばきごち)、そして「真東から吹く時は正東風(まごち)」など。 本当に自然との繊細な関りの中で、綴られてきた大切な言葉ですね。

 「東風」を読んだ歌と言えば、あまりにも有名な菅原道真公の歌」が浮かびます。

『東風(こち)吹かば 匂いおこせよ 梅の花 あるじなしとて 春な忘れそ』

 菅原道真公が、政敵の讒訴(ざんそ)、陰謀?によって大宰府に左遷され、京の都を去る時に大事にしてきた自宅の梅を見ながら読んだとのことです。
(東風が吹いたら、「その風に香り託して、遠く離れた私に届けてね、梅の花よ。主がいなくなっても、決して春を忘れないでね」)という感じ?

 道真公は、京の自宅で、特に、櫻・梅・松の木を庭木として大切に育てながら季節を感じていたようですね。梅には「飛梅伝説」があり、その庭の梅が、主を慕って京から一晩にして大宰府の道真公の屋敷の庭まで飛んでいったそうです。それくらい大切で愛おしいものとの「別れ」と自らの「左遷」それも「讒訴、陰謀?」という手段で、悔しい境遇の中、何も裏切らない自然な庭木に自らの運命を重ね合わせながら詠んだのでしょうか?

 ところで、梅以外は、桜の木は、主がいなくなったことを、悲しみのなか枯れていってしまったとか、また、松の木は、梅と同じように空を飛んで追いかけたようですが、途中で力尽き、現在の神戸市須磨区板宿町近くの丘に降り立ち、この地に根を下ろしたそうです。

 その松については、「板宿八幡神社」の由緒では、

「当神社は、菅原道真公が九州左遷の際宿泊されたゆかりの地に、永延元年(西暦987年)1月、菅公と武神八幡大神を鎮守神として創祀され、更に明治41年に池之宮明神(別名鳴滝明神)が合祀されました。昌泰4年(西暦901年)菅公が大宰府への赴任の途中立ち寄られ、板で囲った簡単な宿泊所を設けたことから、この地を「板宿」と呼ばれる由縁となりました。菅公が京都で大切にされていた桜は枯れ、梅は旅の途上芳しい香りを届けてくれました。しかし松は素知らぬ様子でした。

 菅公は次のような詩を詠まれました。

 梅は飛び 桜は枯るる 世の中に 

        何とて松のつれなかるらむ

すると一夜にしてこの地に松が飛来してきたそうです。当社周辺の「飛松町」「飛松中学校」等の名はこの伝説にちなんだものです。」(この「」書きは板宿八幡神社のHPからの引用です)

 興味のある方は、機会があれば、お参りして古にふれることも良いかもしれませんね。

 大正時代、数回の落雷により松は枯死、現在、切株が神社に奉られており、「大宰府の飛梅」と並んで「板宿の飛松」と慕われているそうです。

 ところで、梅の花は、「春告草(はるつげぐさ)」とも言われています。この播磨自然高原では2月の後半から咲き始めている?と思われます。また、咲き始めたら皆様にご報告いたします。

 その他、春が来た!!のような歌は、

ひさかたの天の香具山この夕べ霞たなびく春立つらしも
  ー柿本人麻呂  万葉集  雑歌ー
 
(天の香具山にやってきて、夕べに霞がたなびいているのを見て、春になってきたようだと)
 
 
冬過ぎて春来るらし朝日さす春日の山に霞たなびく
  ー作者未詳 万葉集  雑歌ー
 
(冬が過ぎて春になった? 朝日のさす春日山に霞がたなびいていますよ)そのまんま、訳はいりませね。
 
 皆さん、これはどっかで聞いたことがありませんか? そうです、百人一首にある歌。

春過ぎて夏来るらし白妙の衣乾したり天の香具山
  ー持統天皇  万葉集  雑歌ー

(春が過ぎて夏になった? 祭りに使う白い衣が乾されていますよ、天の香具山に)

 これはパクリ過ぎ? 名前の出ている持統天皇の歌が先に詠まれたんでしょうね? 
 
 ともあれ、本日は、穏やかな天気です。今週末、寒さ厳しいようですが、春は来ました。
 
 皆様が健やかなる日々をすごされること願っています。
 
 
 

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